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吉田元樹

「何事も楽しく全力で!」

· Players

最初に吉田元樹選手にお会いしたのは、今年の2月。

大学卒業を控え、プロ生活の第一歩をシドニーでのテニス留学から始めようとする頃でした。

ジュニア(高校)卒業、あるいは大学卒業のタイミングでプロとしての自信と確信をもって競技活動の第一歩を踏み出す選手がふつうですが、彼は違いました。いや、そうせざるを得なかったと言ってもいいのかもしれません。あくまでも勝って評価され、それで「飯を食う」プロスポーツの世界。しかし今の実力では何も残せない。

でも、小さな頃から憧れ、夢見てきた世界は諦められませんでした。就職浪人ならぬ「プロテニス浪人」。すぐに競技活動には集中せず、まず自力をしっかりつけることに集中する期間を持とうと考えたのです。

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Tennis Tribe.JP (以下TT)in Tokyo :「元樹ですか?そっちはこれから寒くなっていくよね。」

吉田元樹選手(吉田) in Sydney:「ご無沙汰してます、はい元気にやってます。日の入りが早くなって、いよいよ僕の苦手な冬の季節になってきました(泣)」

TT:「さて、改めてのインタビューはテニスとの出会いからにしましょうか!」

吉田:「はい。姉の影響で、遊びで5歳から千葉県野田市の川間グリーンテニスクラブでラケットを握りったのが始まりでした。」

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(左が吉田選手)

TT:「その1年後からTTC(吉田記念テニス研修センター)で本格的に始めたんでしたね。素晴らしいコーチとも出会って、今でも親交があるようですね。」

吉田:「はい、普通のジュニアクラスで始めて、10歳の時に車椅子テニスの国枝慎吾選手のコーチとしても有名な丸山(弘道)コーチと出会って、選手育成を本格的に行う『フューチャーズ』の予備生のような『ヤングフューチャーズ』に進むチャンスをいただきました。丸山コーチは、僕が留学先を選んでいる時にも相談に乗ってくださりました。留学中のVoyager Tennis Academyは、僕も考えていたところを偶然にも丸山コーチも推薦してくださったり。」

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(中央に丸山コーチ、左が吉田選手)

TT:「その後フューチャーズに上がって本格的に競技としてのテニスの始めたんでしたね。」

吉田:「はい、その時に教わったのは森(寛志)コーチです。大学の時にTTCに帰るたびにも、何かと声をかけてくださいます。森コーチがジュニア育成に関わった最初の生徒が僕だったらしいので、ぼくが『一番弟子』ということになります。」

 

TT:「そこから『3度の飯よりTTC』と、テニスにどっぷりな生活ということですね。」

 

吉田:「本当にそうでした。フューチャーズは本当に才能豊かな選手がいます。その中で僕は器用な方ではないし、むしろ劣っていると感じていました。それでも、テニスへの思いは人一倍あると自覚していましたので、追いつき、追い越せるように、人一倍練習をやったと思ってます。その結果『3度の飯よりTTC』になっちゃったんです(笑)」

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(森コーチと)

TT:「U12〜U-14では好成績を残して、ジュニアのナショナルチームにも選抜されました。しかし、その後成績が出なくなります。その頃を改めて振り返ってみるとどうですか。」

吉田:「小学生や中学生の頃はみんな身体的にも成長過程にあって、個人差が出やすいと思うんです。僕のその頃は、いい意味であまり考えず自分のプレーに徹することができていて、誰が相手でもねじ伏せられる感覚がありました。身体がまだ小さい相手も多くて、打っていれば勝てたし、試合も勝ち上がって行けたんです。でも、高校にもなると他の選手も体ができてきて、今まで打ち勝っていた相手が対応するようになって、逆に僕が打ち負けてしまう状況が生まれてきました。」

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TT:「ナショナルチームに選抜されたという事実が、自分に無言のプレッシャーを与えていたということも伺いましたが。」

吉田:「それもありました。それまで打っていれば勝てた相手が迫ってくる。僕はナショナルに選抜された選手のプライドで負けるわけにはいかないと考えるようになっていました。それに高校にもなると、試合の戦術を深く考えるようになっていて、そうしたら1球のミスにこだわるようになって、理想のイメージと現実のプレーが離れていくことに恐怖を感じ始めてしまいました。それまで勝てていた相手にも、試合前から強いと感じるようになり、試合の序盤から硬く入って、消極的になってしまいました。試合の進行とともにそれは解けて自分らしいプレーも出てくるんですが、その時にはすでに遅くて、試合は劣勢。勝ちから見放される試合が続いてしまうようになりました。」

TT:「しかし、テニスを諦めなかったんですね。」

吉田:「はい。跳ね返すためひたすら練習しましたし、トッププロの試合を観てイメージトレーニングはどれだけ積んだか分かりません。ただ、こういう状況の中でも一つだけ自信を持って言えるのは、どれだけ挫折しても、これまで一度もテニスをやめたいとは思ったことがないんです。」

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TT:「高卒でのプロ転向はこの状況では諦めざるを得ず、大学に進んだのですね。」

 

吉田:「はい、高校3年で全日本ジュニアへの出場権を賭ける関東ジュニアでの勝ち上がりをプロ転向の判断材料とすることにしたのですが、振るわずでした。その頃に専修大学からスポーツ推薦入学のチャンスをいただけましたので、もう4年かけてしっかりプロへの準備をしようと考えました。」

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TT:「大学でのテニスはどうでした?」

吉田:「授業と部活、大学の試合とJOPやITFの試合をバランスさせながらの4年間でした。満足のいく成績を残せずにいたんですが、大学3年の時にITF柏大会のダブルスでベスト8に進むことができました。自信を失いかけている中での勝ち上がりでしたので、がむしゃらにテニスに打ち込む姿勢を貫いて行けば、自分にもチャンスはあるんじゃないかって感じるようになったんです。」

TT:「さて、今年4月にプロ転向した一年目をシドニーのテニス留学から始めることにしたわけでですが、この背景にあるものはなんですか?日本でじっくり活動するということは考えませんでしたか?」

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吉田:「プロツアーを回っていくと日本人ばかりではなくて、世界の選手が相手になります。日本人では見ないようなプレースタイルや、全く違う体格から出てくるパワーへの対応力なども含めて、日常的に触れるような環境に身を置くことが必要と考えたんです。もちろん、時間が許せば日本にいながらそういう機会を作ってプロ活動を続けていくことはできるかもしれません。でも、僕には許される時間は多くないんです。僕のプロとしてのスタートは最初から背水の陣なんです。この1年だけは両親が最低限の生活費の面倒をみてくれますが、来年からは自分で賄っていかなければなりません。今年中にしっかり力をつけて、来年からはスポンサーの獲得も含めて活動費を回せるようにならなければなりません。ですので、海外に武者修行に出ることに決めたんです。」

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TT:「話を変えて、プレースタイルをお伺いしますね。少数派になったシングルのバックハンドは、どういう経緯で身につけたのですか?」

吉田:「実は最初ダブルハンドだったんです。でも、ミスは多いしパワーが出ない悩みがあったんです。10歳くらいの頃だったと思いますけど、バックハンドの練習中にコーチに試しに片手でラケットを振ってみろと言われてやってみると、意外にもスムースに振れてしかもパワーも出て、自分でもスッと入ってくるものがあったんです。それからシングルに変えて今に至ります。」

TT:「シングルハンドを生かした柔軟でスピーディなプレーを目指したいですね。」

 

吉田:「はい、今となっては身長も特に大きい方ではありません(175センチ)から、パワープレーはできません。スピーディに、フットワークも使ってネットでフィニッシュできるようなスタイルを目指したいです。」

TT:「今後の目標を改めて教えてもらえますか?」

 

吉田:「最終的には100位以内でグランドスラムを戦えるレベルを目指したいです。でも、今年はまず十分に自分のプレーと向き合って、世界で戦っていけるプレーの基本になるフィジカルと、勝つための技術と、何よりメンタルを鍛えたいと思います。今、オーストラリア版のJOPのような大会に出て進捗をチェックしながらトレーニングを進め始めています。まず1試合出てシングルスは3回戦止まりでしたが、ダブルスは幸先よく優勝できした。ITFも少しずつ出場して、年末には1000位以内のポジションは持っておきたいです。来年は500位を視野にいれてレベルアップしていくことが当面の目標です。」

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TT:「あ、最後にちょっといいですか?」

吉田:「はい、なんでしょう?」

TT:「一番最初の挨拶への返事、あの時はスルーしたけど、間違ってるよ!」

吉田:「???」

TT:「『元樹ですか?』って言われたら・・」

吉田:「・・あ・・言わなきゃダメですか?『はい、僕です』っすね・・」

最後に一言とサインをいただきました。

慣れない環境でも、この気持ちを忘れずに頑張ってください!

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吉田元樹オフィシャルサイト

聞き手:Tennis Tribe.JP 新免泰幸

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