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藤岡 希

「努力に勝る天才なし!」

· Players

才能というのは、何でしょう?

まるで天からの授かりもののように、いとも簡単に人よりも遥かに優れたパフォーマンスを発揮するテニス選手は、ジュニアにもプロの中にも多くいます。

でも、テニス界のピラミッドは、そんな選手だけで形成されているわけではありません。

今回のピックアップは、藤岡希選手です。

自身が語るように、決して簡単に結果につなげられる才能に恵まれたわけでなく、「むしろ不器用」な選手。

ただ、「努力を努力と思わずやり続ける」という才能には恵まれていると胸を張ります。

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Tennis Tribe.JP(以下、TT):「お久しぶりですね、活躍のニュースを目にするようになりました。」

藤岡希選手(以下、藤岡):「ありがとうございますっ!!ホッとしました(笑)」

藤岡選手は、今年から『福島けんしん』を所属先として、短期での結果が求められる環境に身を置いています。

所属後の最初の試合では優勝を期待されながら準決勝で敗退。

そして先日の福島県総体のシングルスで、所属先の名を背負っての優勝(金メダル!)。ホッとしたというのは、まさにその現われでした。

TT:「福島に移った後の試合で負けて茫然自失な表情だったのを覚えています。よく立ち直って結果を出しましたね。」

藤岡:「ほんとにご心配をおかけしました!なんか、勝ち方を忘れていたという感じでした。自信を失いかけていたので、今回の結果は本当によかったです。」

TT:「いきなり最近の話に行ってしまいました。ちょっと(?)戻ってジュニア時代の話を聞かせてください。」

藤岡:「はい、ちょっと前のことですからね!千葉県の船橋市が自宅だったんですけど、柏にあるTTC(吉田記念テニス研修センター)でずっとやってきたんです。TTCに行きたいと言い出した時に、電車とバスを乗り継いで片道1時間半、往復で3時間以上を自分ひとりで通えるなら良いと母に言われて、小3から1人で通っていました。」

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TT:「そのお母さんの話をもう少し聞かせていただきましょう。確か柔道の選手だったんですよね?」

藤岡:「はい、全日本クラスだったと聞いています。小さい頃から私以上に私がプロになることを夢見て、本当に目一杯サポートしてくれました。」

TT:「例えば?」

藤岡:「毎朝ステーキです!」

TT:「プロレスラーか?!」

藤岡:「体を大きくして、体力をつけるため。ほんと、プロレスラーみたいですね(笑)朝昼晩の食事で30品目を採るように、計算した献立で食事を出してくれて、それをつけたノートは何十冊も家の残ってます。」

TT:「それはすごい!」

藤岡:「風邪をひくと自己管理がなってないと怒られ、虫歯なんかできたら時間もお金ももったいないから絶対作るなと言われてました(笑)」

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TT:「そんなジュニア時代の思い出って何かありますか?」

藤岡:「小学校6年の時に、初めてテニスで韓国に海外遠征をさせてもらえたんです。今まで見たこともないようなレベルの選手に衝撃を受けて、『世界は広い』ってことを12歳にして初めて知りました。それからは、もっともっと頑張らなきゃ、努力しなきゃと考えて、とにかく練習に打ち込みましたし、あの経験があったから、より現実的にプロの選手になるためにやらなきゃならないことを理解した気がします。」

TT:「ジュニア時代の主な戦績を教えてください。」

 

藤岡:「全日本ジュニアU16シングルス ベスト8、U18シングルス ベスト16、U18ダブルス3位が主な戦績になります。」

 

TT:「そこで記憶に残る試合ってありますか?」

 

藤岡:「試合というかラストの年にダブルスで3位入賞したことです。ジュニアラストの年の成績次第で進路を選ぶと行っていた矢先、関東ジュニア直前に病気が見つかって、緊急手術しました。大会の1週間くらい前まで病院で寝ていました。そんな状況で、試合の感覚もないまま出た夏の大会、シングルスは散々でしたがダブルスでは3位になることができて奇跡かと思いました。」

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TT:「さて、高校卒業後、すぐにはプロには転向しませんでしたね。」

藤岡:「そうですね、昔から人がすぐできることを、人一倍努力しなければならなかったんです。結果的に高校時代の戦績も優勝に絡むレベルではなかったのと、一般の試合経験が不足していたので、JOP(日本テニス協会の国内)大会を最初のステップにすることにしました。」

TT:「いつも、私は不器用だからっていうよね」

藤岡:「それ、内緒です(笑)でも、本当です。努力しても報われるかわからないけど、まず努力してみなければ成功はないから、私はチャレンジしたいんです。JOPで国内を転戦する生活を1年弱やりました。当然ですけどプロになるからには世界で戦えるレベルにならないとならないので、練習拠点を思い切って海外に移すことにしたんです。上海のCETA(China Elite Tennis Academy)に移ったのが2012年の2月でした。」

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TT:「上海では多くを学べました?」

藤岡:「はい、もちろんです。日本人とは全く違った考えは、プレーのタイプや試合への取り組み方にも違いとなって現れます。それに、英語が必要だったので、本当に沢山学びました。」

TT:「上海にいる頃から本格的にITFサーキットを回り始めて、プロ転向も果たしましたね。」

藤岡:「練習の結果がすぐに試合に表れて、ランクも順調に上がって行きました。自信もついてきたので、プロへの転向を決めました。」

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TT:「約2年間上海に拠点を置いた後、日本に帰ってから戦績が振るわなくなってしまいました。聞きにくいのですが、何がありました?」

藤岡:「正確には、上海の最後の方から成績につながらなくなりました。一つは上海の拠点が登録選手の中心をジュニアにシフトさせたので、練習相手に不足するようになったことがあります。それが日本に拠点を戻すきっけかでもあったんですが。でもそれ以上に、足に怪我を抱えてしまっていたんです。上海の最後の方から症状が出始めていたんですが、足を踏むと痛みがでるようになって、当然ですけどそれじゃパワーが出ないどころか、フットワークもまともにできません。拠点を考え直さなければならなかったり、そもそも怪我で練習も試合も中途半端になってしまったりで、流れが切れてしまいました。」

TT:「それでも、試合には出ていたんですね。」

藤岡:「完治した今だから言えますけど、あの頃にメインスポンサーをいただける可能性があって、怪我で試合に出られない状況だとその話も流れてしまうと思ったので、無理をしてしまいました。結果的にご縁はいただけなかったんですが。。」

TT:「成績は出ない、怪我はしてる、スポンサーはつかない・・」

藤岡:「正直、ポジティブな私でもこの時は『このまま終わってしまうのかな・・』って思いました。」

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TT:「ですよね。。でも今、元気にプレーしてる。」

藤岡:「はい、迷惑かけっぱなしの両親に頭を下げて、1年間は最低限の支援をもらえるようにお願いして、怪我を完治させて再スタートすることにしたんです。」

TT:「その中で、練習拠点も新たにJITCで再スタートを切ったわけですね。」

藤岡:「はい。その他にも、この1年間はワンビ様(www.onebe.co.jp)にもパッチ(ワッペン広告)スポンサーをいただいたり、上月財団様からの支援、テニスウェアやアイウェア、ドリンクなどの各社様もご支援を継続してくださいました。」

TT:「誰かは、見ているものですね」

藤岡:「ほんとそうですね。そんな中、この春から福島けんしん様からサポートいただけることになって、最初の話に繋がるんです。」

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TT:「この1年のテニスはどうですか?」

藤岡:「なにせ不器用なので(笑)、コーチに言われたことを理解して表現することに苦労した1年でした。でも、言ってくださることは必ず分かるようになって、遅いですけど自分のものになってきています。」

TT:「最近のテーマはなんですか?」

藤岡:「メンタルです。せっかくコーチに教えていただいて技術的に習得できたとしても、練習でできても試合で発揮できないと何にもなりません。今、スポーツ心理学の先生にも教わり始めたところなんです。心底テニスと向き合う時間が取れていますし、最近は結果も付いてきて、これまでのテニス人生の中で環境的にも気持ちとしても安定していて、とてもいい時間を過ごせていると思います。」

TT:「プロ転向4年目、今後の抱負を聞かせてください。」

藤岡:「プロとして目指すはグランドスラムですが、まだそれが視野に入るランキングにはいません。まずは500位台を目指しています。そこは、その先にグランドスラムへの道が見えてくる最初の段階だと思うんです。」

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TT:「全日本選手権はどう考えていますか?」

藤岡:「ランキングには関係ないんですが、それでもやはり日本一を決めるタイトル戦なので、日本人選手として取りたい大会ですね。ここで活躍できれば、自分の自信にももっと繋がると思うんです。」

TT:「福島けんしんの選手としては?」

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藤岡:「福島けんしんの選手として、国体で活躍したいです。今の私があるのも、そして見失いつつあった自信を取り戻させてくれたのも、福島けんしんとのご縁があったからです。『心配しなくていいから楽しんできてね。』と優しく送り出してくださる理事長はじめ、みなさん本当に器が大きくて、優しくて、こうして話しているだけで涙が出てきちゃいます。そんなみなさんの期待に何とか応えたいんです。』

TT:「こういう選手でありたい、というのはありますか?」

藤岡:「私は、本当にテニスしかしてきていないんです。いっぱい迷惑をかけてきたし、不器用だし(また笑)。でもコーチにもいつも『とにかく元気がある』って言われるくらいなので、私からの恩返しとして、もっといろんな人に会って、世界を広げて、人間性も高めて、そして私の持ってる良いエネルギーを他の人にも伝えたいです。

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TT:「あ、忘れていましたが、最後にひとつ。。」

藤岡:「はい、なんでも。」

TT:「福島弁はマスターした?福島弁で締めくくってください!」

藤岡:「ええっと・・ちょっとイントネーションが違うんですよね、でもそれが馴染みやすくて大好きなんです。でも、まだマスターしてないです(笑)」

TT:「福島けんしんさん、こんな藤岡ですみません!(笑)」

最後に一言とサインをいただきました。

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「努力に勝る天才なし!」

まさにこの言葉は、藤岡選手を体現しています。頑張ってください!

藤岡選手への応援メッセージは、Facebookまでお願いします。

また最新情報は公式ウェブサイトからも発信しています。

聞き手:Tennis Tribe.JP 新免泰幸

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