今回は、2017年に大学卒業組でプロデビューしたひとり、西脇一樹選手です。小さな頃からプロを目指して日夜名門テニスクラブで汗を流し「その時」を待つ選手もいれば、高校・大学と純粋にテニスが好きで、競技者として揉まれる中で頭角を現し、いつしかプロという職業を進路にとる決断を下す選手もいます。西脇選手はまさに後者。大学の4年間を過ごした明治大学の西調布コートで、慣れないという海外遠征の合間にお話を伺いました。
Tennis Tribe.JP(以下、TT):初めまして。Tennis Tribe.JPはご存知でしたか?
西脇一樹選手(以下、西脇):はい、住澤くんの記事も読みましたし、他の選手のも一通り。
TT:「ありがとうございます。では、話は早いですね(^^) テニス開始年齢が10歳。遅い方ですね。」
西脇:「実際には、3歳くらいにはラケットをオモチャにして遊んでました。父がソフトテニスのコーチで、伯父ちゃんもテニスをやっていて、コートの脇で遊んでいたのが最初です。でも、やってるうちに入らない時期かなって思います。」
(3歳どころか、0歳から?)
TT:「10歳で始めたきっかけは?」
西脇:「両親が働いていたので、僕は学童保育を受けていたんですね。小4年からは受けられないので近所の湯山テニスクラブに学童代りに行くようになったのが始まりです。」
TT:「なんと。近所にテニスクラブがなかったら本格的にやっていなかったかもしれないんですね。」
西脇:「体操とか他の運動は苦手だったんですけど、サッカーは得意だったので、サッカー選手を目指していたかも(笑)」
TT:「テニスについて、どんなジュニア時代でしたか?」
西脇:「小学校では成績を残せませんでした。11歳の大会で、中学校の教員だった父の教え子という人が僕のエントリを見て『西脇先生の息子さんですか?』って声をかけてくれたんです。今でもお世話になっている奥田コーチで、本当に偶然のことでした。それからテニスをみてもらうようになって、中学では京都市内の大会で優勝できるようになりました。」
TT:「その後も奥田コーチとの縁は続いているんですね。」
西脇:「はい。高校や大学時代も色々相談に乗ってもらっていて、今でもそうです。」
TT:「奥田コーチの出会いから本格的にテニスに打ち込み始めたわけですが、高校で長野の松商学園に進学したのは?」
(高校時代、奥田コーチと)
西脇:「奥田コーチから親元から離れて自立する方がいいとアドバイスされていました。いくつかの学校は事前に練習に参加させてもらってどういう感じかを確かめて、どの選手がどの高校に行くかは聞こえていたので、強い選手の揃い具合も含めて松商学園に決めました。そこには諱(いみな、諱五貴さん)も進学を決めていて、その後大学まで一緒にプレーしました。」
(高校で諱選手と)
TT:「高校では成績が出始めましたね。」
西脇:「そうですね、高3のインターハイで諱と組んだダブルスで優勝したことが思い出です。インターハイはシングルスで最高ベスト16でした。」
(高3インターハイ、ダブルス優勝)
TT:「明治大学に進学後、チームの主要メンバーとして活躍されますが、早稲田や慶応の選択肢はありませんでしたか?」
西脇:「僕の高校時代の成績や実力からいうと、早稲田や慶応に入ってもレギュラーメンバーにはなれないと考えました。僕は大学でも試合に出たかったし、サポート役に回ることは考えていなかったので、メンバーに上がれる可能性を考えて明治を候補にしたんです。それに、高校の練習には松商の卒業生で明治に進学した先輩が来ていたので、気持ち的に近かったというのもあります。」
TT:「大学でも学年が上がるたびに成績も上がっていきました。」
西脇:「はい、そうですね。インカレでは2年でシングルス予選、3年で本戦に上がれてベスト16、4年の時にベスト4まで行けました。」
TT:「学生じゃなく、全日本選手権のダブルスでベスト4というのもありますよ。」
西脇:「そうですね。そのあたりはプロに行くと決めて臨んだ大会でしたので、本当はもっと上の成績を残したかったです。」
(2016年全日本選手権ダブルス、パートナー染矢選手)
TT:「では、プロを目指した西脇少年について伺いましょう。いつ頃から意識していましたか?」
西脇:「中学も高校も、プロを目指せるような成績もありませんでしたし、実は進路として考えたことはなかったんです。大学に入った時も変わらずだったんです。でも、4年でまわりが就活を始めるようになって、僕も改めて自分の進路を真剣に考えました。でも、どうしてもスーツを着て就活をする自分がイメージできませんでした。」
TT:「プロでやって行く自信が、その時に既にあったということでしょうか」
西脇:「自信というよりも、毎日テニスが上達している感覚を持っていたのと、就職してテニスが弱くなっていく自分を許せないと思ったんです。もちろんプロになるなんて簡単な話じゃないので、この時も奥田コーチに相談をしました。結果的にプロを決意しました。」
TT:「プロを進路と決めた後はどうでした?」
西脇:「進路を決めてから、やらなければならないプレーの課題に取り組み始めました。学生時代は粘っても戦えましたが、プロはそれじゃ勝てないのは分かってました。粘るだけではなく中に入って攻撃的になる取り組みをやっています。プロに進むのだから、インカレももっと上の成績が欲しいと強く思うようになったり、それまで以上にやらなければならないことがイメージできるようになってきました。」
TT:「それを受けてのインカレベスト4ですね。」
西脇:「はい。それは良かったんですが、学生王座では惨敗してしまいました。その後の全日本(テニス選手権)である程度の成績を残さないと『西脇プロに行って大丈夫かよ』って言われるなって思ってました。」
TT:「その結果、全日本でのダブルスのベスト4。」
西脇:「はい。でも、もっと上の成績、そしてシングルスでも成績を残したかったのが本音です。」
TT:「アマチュア時代で、思い出に残る試合は?」
西脇:「大学4年のインカレで、諱と当たった準々決勝です。中3から8年間も一緒にテニスをしてきた友人と、勝ち負けでなく試合をできたことがとても嬉しかったです。諱は選手としていつも上にいましたし、もし腰を傷めずにいたらきっとプロになってかなり上に登っていると思うので、その分も僕は頑張らないと思ってます。」
TT:「西脇選手のプレースタイルを聞かせてください。」
西脇:「身長はそれほど大きくないですが(178cm)、サーブは得意です。あとは走ってネバっていくスタイルが基本です。足腰だけは、小学校の時にはテニスクラブと家の間の山越え1−2キロを毎日走ってたので、走り負けだけはしませんよ(笑)」
TT:「サーブがよければ、その後の主導権をしっかり握れる攻撃力をつけたいですよね。」
西脇:「はい、それが真っ先に取り組んでいる課題です。でも、学生時代からフォアハンドがあまり得意じゃなかったんです。かと言ってバックが人より優れているというものでもなかったので。」
TT:「それじゃだめじゃん(笑)」
西脇:「はい(笑)今は攻撃力も上がってきていると思うので、形になってきていると思います。それとボレーも練習中です。僕、ボレーほんと下手くそなんですよ。」
TT:「これまでの戦績でダブルスで結果をだしてるじゃないですか。」
西脇:「学生でベスト8とか4は、ボレー下手くそでもいけちゃうんですよ(笑)」
TT:「ライバルと思える人はいますか?」
西脇:「今まで学生時代はこの人に追いつきたい、この人を抜きたいっていう人が必ずいたんですけど、プロになると世界が広がり過ぎちゃって、誰を目標にするべきか焦点を当てられないままでいます。僕の性格上、誰かそういう人を見つけないといけないなって思ってます。」
TT:「さて、ITFサーキットを回り始めて率直にどうですか?」
西脇:「今年の2月に中国のフューチャーズ大会に参加するまで、実は海外に行ったことなかったんです。」
TT:「え??個人的な旅行も含めて一度も?」
西脇:「信じられないかもしれませんが、本当なんです。初めての海外が、中国で、しかもひとり旅。慣れるのが大変ですね(汗)」
TT:「ハプニングとかはありませんでしたか?」
西脇:「5月のシンガポールは、予選を上がって2回戦に行ったんですけど、試合待ちを外でしていたら熱中症になっちゃったんです。まさか自分がなるなんて思ってもみなかったですけど、東南アジアの蒸し暑い気候も初めてだったのでいい経験いなりました(大汗)」
TT:「最後になります。今年と来年でランキングはどのあたりを狙いたいお考えですか?」
西脇:「今年の年末ランキングで1万5000ドルの本戦からスタートできるところにはいたいので、900位くらいですかなと思います。来年には500位台に行きたいです。その位置だと、少し先が見えてくると思うので。」
(学生時代を過ごした西調布の学生寮)
TT:「そして本当の最後です。プロの選手として目指すのは?」
西脇:「グランドスラムのシングルスで、勝ち上がってセンターコートで試合ができるような選手になりたいです。」
TT:「ダブルスの方が可能性が高いかもしれませんよ?」
西脇:「はい、でもボレーできないんで(笑)」
最後に一言とサインをいただきました。
TT:「あれ、これどこかで聞いたことありますよ。マイケル・チャンがかぶってるキャップに書いてある言葉です。」
西脇:「え?そうなんですか?それ知らないです。寮で先輩の部屋の壁に書いてあって、いいなと思ってからずっと覚えていたんです。」
TT:「商標登録とか大丈夫かなぁ〜(汗)」
応援メッセージは、西脇選手のFacebookにお願いします。