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上杉海斗

「悔いのない選択」

· Players

上杉海斗選手(上杉):「ぼくは哲平の後を追いかけてきただけなんで、何にも話すことないですよ〜!」

「哲平」とは、海斗選手の兄で、先に取材したプロテニス選手の上杉哲平

Tennis Tribe.JP (TT):「哲平くんも何も話すこと無いって言いながら、2部作にしたくなるくらいたくさん話が出ましたからね(笑)」

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上杉:「ホンマですか〜?!」

TT:「じゃ、その哲平の後を追いかけたというところから聞かせてください(笑)」

兄・哲平の後をなぞった幼少時代

上杉:「えっと習い事はソロバン、水泳、ソフトボール、それにテニスです。全部哲平と同じことを追っかけてやってました。」

TT:「哲平くんは合気道も少しやってたみたいですよ?」

うえ:「えっ、それホンマですか?それ知らんかったです!へぇ〜哲平が合気道!」

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(兄と同じく、幼少期はソフトボールもプレー)

TT:「野球じゃなくてソフトボールというところは、追いかけていた感がありますね。では、テニスを始めた頃を教えてください。」

上杉:「小2、、あれ4年やったかな?」

TT:「テニス開始年齢の情報によれば、10歳になってるので、小4みたいですよ。」

上杉:「そうや、オレンジボールで始めたのが小2で、週1でやってました。小3で普通のボールになって、その後に小4から小5で少し本格的に始めたので小4の10歳ってことにしたんだと思います。その後は哲平も通ってたコ・ス・パの育成クラスに小5の秋に移って、月〜土の週6やってました。」

TT:「日曜日は唯一の休息日ということですね。」

上杉:「いや、日曜は朝からソフトボールでした。」

TT:「こりゃ忙しい。その頃のテニスはどうでした?」

上杉:「30人くらいの大きなクラスで、学校みたいで楽しかったです。でも女の子にも負けてたくらい弱くて、よくコーチにイジられてました(笑)」

TT:「大会に出はじめたのは?」

上杉:「小4、5くらいから出はじめてましたけど、何が何の大会かも分からず・・」

TT:「哲平くんも似たようなこと言ってました。全中の存在も中3で初めて知ったくらいだって。」

上杉:「そうそう、全小も、関小も何の大会や?って感じでした。」

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(なんでも追いかけた、兄・哲平選手)

TT:「哲平くんが何かにつけて目標だったんですね。」

上杉:「テニスでも何をやっても、哲平に勝るものは何もなかったですからね。ゲームしても、ボーリングやっても。先生も『兄貴はずっと寝てるのに、点数はちゃんと取ってた』って言うし、父親は頭も良くてスポーツもできる人なんですけど、そのどっちも哲平に持ってかれた気がします。」

TT:「ゲームでも(笑)」

上杉:「そう。中学の時、プレステで『みんなのテニス』を買ったのに、自分が使う前に哲平が開けてプレーして全クリ(クリアー)しちゃうんです(笑)それでケンカになるんですけど、そのケンカも哲平で始まり、哲平で終わるんです。」

TT:「まぁまぁ、仲がいいことで、よろしい!」

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(今でも仲のいい兄弟+いとこ)

TT:「小学生時代のテニスで思い出に残っていることはありますか?」

上杉:「小5の夏にサマージュニアとかいう大会があって、予選決勝を勝って本戦に上がった時に、『勝ってすごいね』って言われた気がします。で、本戦は一回戦で負けた気がします・・(笑)」

TT:「気がするって、なんとも曖昧な。他の気がする思い出は?(笑)」

階段を登り始めた中学時代

上杉:「その大会で、横のコートで第一シードがやってたんですけど、一人だけ頭2つくらいでかくて、哲平よりサーブが速いんやないかっていう衝撃の記憶があります。」

TT:「何という選手ですか?」

上杉:「矢多弘樹です。中学と高校で一緒になりましたけど、その時は衝撃の記憶でした。」

TT:「では中学になってからのテニスを教えてもらえますか。」

上杉:「『練プロ』でした。僕以外にも3人くらいそういうのが周りにいて・・」

(筆者補足:練習はめちゃくちゃ上手いけど試合ではいまいちの意味らしいです。)

TT:「いいのか悪いのか・・。その後、戦績を上げ始めたのはいつ頃からでしょうか?」

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(中3で全中に出場するも、「名前負け」)

上杉:「中2で府大会の本戦に上がってベスト4、関西ジュニアでベスト16くらいでした。中3になってから、初めて全中の本戦に上がりましたけど、一回戦でシードのついた中1の選手に7-9負けてしまいました。それを全国に行って満足したんやないか、それ以前に相手に名前負けしてしまったんやないかってコーチには怒られました。特に名前負けしたというのは、今でも(戒めとして)心に刻んでます。」

TT:「でも着実に全国レベルの実力をつけていったわけですね。」

上杉:「それと中3になって、さっき話にでた(矢多)弘樹が関西に帰ってきて、コ・ス・パに戻ってきたんです。コーチから、僕と弘樹でダブルスを組めって話になって、でも弘樹は中2の時に全中と全日本ジュニア(U16)のダブルス優勝ですよ!もう緊張しかなかったです。府大会、関西でベスト4、全日本ジュニア本戦には行きましたけど、1回戦止まり。あ〜やっちゃったなって。でも、ダブルスの戦い方はサインも全部、弘樹に教えてもらいました。」

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(ノーコメント・・・)

矢多選手とともにトップジュニアに駆け上がった高校時代

TT:「さて、高校ですが、哲平くんと同じ清風高校。お兄さんの時は、放課後に毎日練習コートまで10キロランニングしたり、地獄の合宿があったりとか聞いてます。」

上杉:「僕らは『ゆとり世代』ですからね(笑)そんなメチャメチャなことはなかったです。部の練習は校庭での朝練だけで、放課後はコ・ス・パで練習していいということになってました。それに先輩の先輩が哲平なので、弟の特権もちょっとあったかもしれないです(笑)」

TT:「清風には矢多くんも一緒に入ったんですよね。」

上杉:「そうです。高1のインターハイでぼくは出られなかったんですが、高2では出られて、シングルスは3回戦、ダブルスは弘樹と組んで1回戦でした。この高2のインハイ団体戦、シングルス2で出たんですけど、対戦相手の大成高校が写真付きで『優勝候補』って紹介されているのを見て、ぶっ倒したるって燃えました。でも試合はメチャ楽しんでて、集中してたせいか周りでたくさんの人が見ていたのに全く気にならないくらいでした。結果8-6で勝った時は、最高に気持ちいい瞬間でした。」

TT:「その勢いで、高3の話も聞かせてください。」

上杉:「高3の団体戦は、準決勝で相生(学院)に敗退でした。僕はシングルス1で出場で、ファーストセット取られてセカンド2-3ダウンの時に汗がすごくてラケットがすっぽ抜けてしまったのでラケットを替えたんですが。そこから絶好調になって63、60。」

TT:「絶好調って、つまりそこから10ゲーム連取したってことですか。その絶好調は個人戦で活かせたようですね!」

上杉:「シングルスは準優勝、ダブルスの決勝の相手は清風の後輩ペアだったこともあって、弘樹に『絶対優勝するぞ!』って気合いを入れられて、なんとか勝ちきって優勝できました。」

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(矢多選手と勝ち取ったインターハイ・ダブルス)

TT:「高校生活を通じて全国レベルを固めたわけですが、インターハイ以外で思い出に残っていることは?」

上杉:「高3で全日本ジュニアとインハイのダブルス優勝で、(2013年)全日本選手権の本戦ワイルドカードをもらえて出場した時ですかね。ところが最初の対戦から第一シードの近藤/松井ペアですよ。」

TT:「お疲れ様でした〜」

上杉:「有明のセンターコートで、ウォーミングアップ中に選手紹介されるじゃないですか。『審判台の右側〜近藤・松井ペア、JTPランク5位〜。審判台の左側〜矢多・上杉ペア、761位〜』って。もうそんな言わんでいいって、メッチャハズッ!!って思ってました。」

TT:「でも勝っちゃった!」

上杉:「そうなんです、勝っちゃったんです。その晩は泊まる予定なかったので、カプセルホテルでした(笑)」

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(そのダブルスの名手・松井俊英選手とは、のちにプロでペアを組む縁に)

TT:「高校時代にジュニアのトップレベルに成長したわけですから、その後のプロ転向は考えていたわけですよね?」

上杉:「いいえ、プロになるなんて全く考えてなかったです。大学でもテニスは続けるつもりでしたけど、おそらく哲平と同じ近畿大学か同志社に行けたらくらいでした。哲平もそうでしたけど、コーチに進路を相談をしていて、そしたら僕の時には『早稲田と慶応に縁があるけど、どうや?』っていうんです。僕からすると、そんなとこは雑誌の世界やし、関東に行くなんて考えにも及ばないことでした。でもコーチにはその後もいい大学だからと言われて、色々考えて、慶応に進学することにしました。」

TT:「ところで海斗くん、話すことないなんて何もないって言ってましたよね?!(笑)」

上杉:「いやホンマ、どんどん思い出して、話できるもんですね。大学の記憶は鮮明なので、もっといっぱい話せそうですよ!」

TT:「ほらね。もちろんお付き合いしますよ。記事ではカットしちゃうかもしれないけどね(笑)では、大学からのお話を。」

エンジン全開で駆け抜けた大学テニス

上杉:「大学1年の春関(春季関東)の2回戦で、高校時代の師匠栗林さんに勝ってインカレに上がれました。栗林さんは2つ上で僕が高1の時に3年で全日本ジュニアを優勝した方です。高校時代から、正面に打ってきたりイジメられて・・いや遊んでくれて(笑)、根本的に強くしてくれたのは栗林さんのお陰やと思ってます。明らかに差があるのに大学で勝てたので、その勢いでインカレに行けたと思います。」

TT:「高い壁を越えた、少なくとも並んだと言っていいんでしょうね。」

上杉:「それと春の早慶戦も思い出深いです。ダブルス1で勝利したんですけど、男女揃っての応援と、初めての5セットマッチでファイナルセットの勝利でもあったので、メチャメチャ気持ちよかったです。それに、シングルスでも出場して、そこでは春関の勝利があるので栗林さん対戦するようオーダを組んだのが当たって、これも勝ちました。この頃が自分のテニスが何なのか分かってきた時期でした。」

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(大学1年、「師匠」の栗林選手に勝利を掴み、弾みをつける)

TT:「他に思い出深い試合などは、どうですか?」

上杉:「大学2年はダブルスで高田航輝さんと組んでたんですが、ずっとベスト16止まりだったんです。航輝さんは大学最後の年でしたし、インカレのシングルスでは3回戦で当たって僕が上がった分、ダブルスでは絶対に優勝して終わりたいという思いでやってました。結果的に優勝できたし、これが思い出深い大会になります。」

TT:「『手ぶらで帰せない』ってとこですね!」

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(インカレダブルス優勝、高田選手の大学最後の大会に花を添えた)

少しずつ育んだプロへの意識

TT:「さて、学生テニスと並行で、プロサーキットにも高校3年から出場をしているようです。特に大学に入ってからは積極的に出場されています。」

上杉:「そうですね、最初は高3の11月に出た慶応チャレンジャーでした。相変わらずフューチャーズとかよく知らんで出場しました(汗)着替えるところも分からなくて、コートのベンチでパンツ履き替えちゃったり・・」

TT:「おいおい(苦笑)!! 戦績は、大学3年から特にダブルスで上げ始められたようです。昭島で準優勝、軽井沢でと東京でもベスト4、大学4年では西東京(早稲田)で仁木選手と組んで初優勝。プロを意識してのサーキット周りだったのでしょうか。」

上杉:「いいえ、大学1・2年時点ではプロなど全く考えていなかったです。坂井監督からは2年の時にプロに行けると言われはしましたけど、英語は全然ダメやし、一人で世界を回るなんて考えられなかったし。でも3年の時には慶応チャレンジャーのシングルスで内山(靖崇プロ)さんに勝ってベスト8に入ったこともあって、少しやってみたいという気持ちも芽生えながら・・」

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(大学3年、ホーム・慶応でのチャレンジャー大会で内山靖崇プロに勝利)

TT:「内山選手に勝ったというのは、相当の自信になったんじゃないですか。」

上杉:「・・いや、そんな単発の勝利で『自信になった』のでプロでもできるなんて思ってもいなくて、むしろ『自信にしたい』と捉えてました。でもそうこうしているうちに周りで就活が始まったのですが、自分は就職しても後からテニスでやっていけたんやないかって思うのは嫌だなという気持ちが出てきて、どんどん大きくなっていきました。悩んだし、不安はあるけれど、今しかやれないことをやってもいいんじゃないか、全ては自分次第なんやと思って、プロを決断しました。」

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(2017年全日本テニス選手権、大学のチームメイト西本恵選手とのミックスで優勝)

大学卒のプロとして

TT:「昨年(2018年)プロ転向されたわけですが、注目と期待が高い中でダブルスで2勝を挙げて、順調な滑り出しと言っていいのでしょうか。」

上杉:「ナショナルに呼んでもらったり、周りから評価をもらっていることは分かってますけど、自分ではそんな実感はないんです。でも思い切ってチャレンジしたいと思いますし、チャレンジすること自体は嫌いじゃないし。プレーでも、ピンチの時こそ攻めるチャレンジをしたいです。」

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(2019年慶応チャレンジャー)

TT:「大学卒からのプロ転向は多くの日本人がチャレンジしているパスです。」

上杉:「やるからには、大学上がりを誇りにして上を目指します。失敗する可能性は高いのでしょうけど、それを承知でやれるとこまでやっていきたいです。プロ決めてからの大学の試合では、大学生に負けたからといってプロなる時には関係のないことやし、プロになってからの勝ち負けが大事やと考えるようになりました。夏のインカレもタイトルとってないですけど、プロとしていけるとこまでいってみたいですね。」

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(2018年全日本テニス選手権)

TT:「では、2019年の抱負を聞かせてください」

上杉:「2019年は、とにかくいち早くチャレンジャーレベルになることを目指して頑張りたいと思います。今はダブルスでチャレンジャーに行くことが多いですが、シングルスも同じように上のレベルで戦えるように頑張りたいと思います。」

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(プリンス本社にご挨拶・・です)

おまけ・・海斗選手のまた抜きショット!・・が・・

最後に、一言をいただきました。まさに、その心境ですね。

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写真提供:

横山芳治さん

上杉海斗選手

ご協力ありがとうございました。

聞き手:

Tennis Tribe.JP 新免泰幸