2017年4月1日から千葉県柏市で行われた男子ITF 15,000ドル かしわ国際オープンで、決勝で伊藤竜馬選手と戦い準優勝した志賀正人選手をピックアップします。
志賀選手は1991年生まれの25歳。
キャリア最高位のATP500位台前半につけ、上り調子の中で決勝まで勝ち上がった志賀選手に、彼のテニスと、柏での戦いについて、根掘り葉掘り聞きました!
Tennis Tribe.JP (以下、TT):「かしわオープンの連戦、お疲れ様でした。まず最初に、志賀選手がテニスを始めたきっかけと、プロを意識した時のことを教えていただけますか?」
志賀選手(以下、志賀):「お疲れ様です。応援ありがとうございました!テニスを始めたきっかけですが、7歳の時に両親に付いてコート行ったのが最初です。引き込まれるようにTTC(吉田記念テニス研修センター)での低学年向けの練習を始めていました。」
TT:「テニス以外にも習い事や他のスポーツはやっていたんでしょうね?」
志賀:「それが、テニスを始めた最初から、いつかはプロ選手になるんだ!と意識をしていて。」
TT:「それは驚きました、でも、野球少年の誰もがプロ野球選手を夢見るようなものではなかったのですか?」
志賀:「いや、最初から真剣でしたね、他のスポーツをやっても『テニスのため』という考えでした。他の習い事も特にしていなかったんです。」
当初から、プロ意識を強く持ってテニスに取り組んできたという志賀選手。ジュニア時代、TTCの選手育成クラスでの鍛錬の日々を過ごします。その後、高校卒業と同時にプロ転向して世界の荒波に乗り出す選手が多い一方で、志賀選手は大学進学という選択肢を取ります。
TT:「高校卒業後にプロには転向せず、大学進学を選択しました。この時の決断について教えてください。」
志賀:「はい。高校の時点でプロで戦うだけのレベルに至っていないと自己分析ができていました。もちろん、もっとテニスに集中する環境に身を置いて準備をするというパスがある事は理解していましたが、将来に別の選択肢を持っておくために大学での経験も必要だろうと考えてもいました。」
TT:「何と冷静な。誰かにそのような指導を受けたのですか?」
志賀:「いいえ、親にはもちろん相談に乗ってもらいましたが、自分で考えて進路を決めました。大学も入試で入ったんです。」
TT:「その大学での4年間は、ご自身のテニス人生にどういう影響を与えてくれましたか?プロに転向しておいた方がよかったとか考えることはありますか?」
志賀:「大学に行って、本当によかったと思っています。TTCではテニスというスポーツと、選手としての基礎技術を学びましたが、大学では気持ち・気合い、強いメンタルを体得しました。僕はテニス選手としては身長が小さいのですが、それを補うトレーニングを十分に積んで相当に鍛えられたのも、大学での4年間があったからです。」
志賀選手は身長165センチと国内の選手と比較しても小柄。世界では190センチや2メートルを超える選手が多い中で、どのように戦っているのでしょう。
TT:「失礼ながら、体格差があることは否めないと思います。どのように戦っているのでしょうか?」
志賀:「はい、もう成長は止まってしまいましたから(笑)。それでも他の選手よりも走りきってボールを拾い、決して体力負けはしないこと。身長がない分は、勝つためにとにかく足を使うことを考えて実践しています。それと、長身選手の調子がよくて完全にオーバーパワーされてしまった時は、こればっかりは仕方のないことですから、考えすぎないようにして、割り切って次のポイントに集中するようにしています。」
ちょっと脱線しますが・・
TT:「ところで、憧れていたアイドル選手は誰でした?」
志賀:「小さい頃は、サンプラスでした。真逆のプレースタイルになっちゃいましたけど(笑)。今は、アルゼンチンのディエゴ・シュワルツマン(身長170センチ、2017.4.10 ATP41位)のプレーを参考にしています。彼も小さい体でとにかく走るんです。その上で、自分から攻めるプレーもある。だから世界のトップレベルにいられるんだと思います。僕もそんなプレーを少しずつ取り入れられるよう参考にしているんです。いくら誰よりも走りきると言っても、体格のある相手に振り回されるとどうしても厳しくなります。振り回される前に相手を動かして、攻めていけるプレーができるようになりたいです。」
真面目な話にしっかりと戻されました。さすがですね。
ランクは上り調子の志賀選手ですが、柏まで5戦連続1回戦負けを喫していました。そんな一年の立ち上がりを聞いてみました。
志賀:「やはり5戦連続はきつかったです。でも、実は去年の同時期はもっと悪かったんです。ディフェンドするポイントもないので、実際のところ気持ちが下がることはそれほどなかったですね。」
TT:「そして、5連敗の後にかしわオープン準優勝。連敗中と準優勝の大会で、何か自分の中で違いを感じていましたか?」
志賀:「やはり、ホームコートのメリットは大きかった気がします。普段の試合では岩見コーチ(元ツアープロ、現在TTCヘッドコーチ)に帯同で見ていただくことはできないのですが、今回は試合に向けてのアドバイスを都度頂いていました。ホームコートで慣れているということと、何と言ってもホームの応援が後押ししてくれました。心と体がフィットしているというか。今までの優勝した試合を振り返っても、心と体がフィットすると余計なことを考えることがなくなって、本当に目の前の一球一球を追いかけている自分に気がつきます。5連敗の時に限らず、負けてる時は、特にメンタル的にフィットしていない感じなんですよね。自分自身でそういうメンタル面のコンディショニングもできるようにならないといけないと思います。」
かしわオープン決勝戦に話を進めていきましょう。
TT:「そのホームで勝ち進んだかしわオープンですが、決勝は格上の伊藤竜馬選手でした。何を心がけて試合に臨みましたか?」
志賀:「それまでの勝ち上がりの試合では、(右利きの)バックサイドへのクロスを軸に組み立てて行けましたが、竜馬さんに対しては同じ配球を繰り返すのは危険だろうと考えていました。なので、クロスを軸にしつつも、時々散らすようにと考えていました。」
TT:「そうでしたね、勝ち上がりの試合ではしつこいほどにバックへのクロスを送り込んで、展開できていましたね。」
志賀:「でも竜馬さんはやはり2−3球同じコースに入れたら逆に攻められるんです。返球についても手元で伸びてくる球威があって、コントロール仕切れず甘い配球になってしまうことも多くありました。」
TT:「差は大きいと感じた、ということですか?」
志賀:「攻めのタイミングが1、2ポイント早いんです。フューチャーズの試合では、もっとじっくり作ってから攻めていくパターンが多いいのですが、これについては差を感じました。」
TT:「それでも、最初の伊藤選手のサービスをブレークして3-0スタート。どう感じてました?」
志賀:「はい、3-0に持って行けた時は、粗を引き出してミスを誘いだせていたんだと思います。そういうプレーで確実にポイントしていけば、勝ち方も見えてきそう。そういう意味では、まだ差はあっても、思ったほど大きくはないのかもしれませんね。」
TT:「最後になりますが、プロテニス選手としての目標と、さらに、将来のキャリアについてどうお考えかもお聞かせ願えますか?」
志賀:「はい。まずテニスの世界では、僕のような大学上がりがトップ100あるいはグランドスラム本戦に登っていくことは難しいと思われていると思います。今までほとんどのグランドスラムクラスの選手が早くからテニス一本に賭けています。僕は、大卒でもそういう世界に行けるようチャレンジして、できるんだと示したいと思ってます。次に将来ですね。まだそこまで具体的に考えたことはないんですが、ツアーコーチは頭の中にあります。日本ではツアーコーチの仕組みが整備されていないんじゃないでしょうか。そうなら、そういうことも考えていくのは、将来のキャリアかもしれませんね。」
TT:「あ、最後に一つ・・。」
志賀:「なんでしょう?」
TT:「メガネ、曇りません??僕も昔メガネでテニスしたことありますが、曇っちゃって。」
志賀:「走っていれば風が起きるので曇りませんよ(笑)」
TT:「あ、もっと走れば曇らなかったんですね。。」
インタビューの最後に、色紙に一言を書いて頂きました。
これは、特に誰かから教えられた言葉ではないそうで、気が付いたらいつも自分の中にあったとのことです。
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